寺のつらなるまち 下寺町
ここまで見事に、
断崖状の緑を背景に 大きな和風建築が連なる景色は、
大阪の内外に関わらず、私は知らない。

京都かと見まごう甍(いらか)の波と緑。
秀吉が日本最初に「寺町」をつくり、
ここ下寺町は徳川・明暦期にできるが、
所蔵されている仏像においてはそれ以前の
平安鎌倉期のものも多い。
時空を超えた贈り物がここにある。

Photo by Ohtenin
左(東)手が南北に伸びる上町台地の西側の崖、手前右手から奥(南)へ伸びる松屋町筋に挟まれた空間に列のように寺がつづく下寺町。
手前の円形の建物は大蓮寺の塔頭(たっちゅう)・應典院。 應典院は、昔の寺の役割をめざして、コミュニケーションセンターや文化発信的活動をする「應典院寺町倶楽部」という活動をしている。

普通は檀家などの関係で寺が隣接することは珍しかった。
秀吉が、城の防備のため、また町中で人を焼くのを避けたため、
寺ばかりを集めた「寺町」ができたという。以後全国の城下町などで寺町ができる。

寺の背後の森は原始林ともいう。

定家と並ぶ平安末期から鎌倉初期の歌人で、
新古今和歌集の選者5人の1人でもある藤原家隆が、
晩年、病により出家してここに移り、「日想観」を行った。
1237年没するも、「日想観」は平安末世から続く動乱の中で、
多くの人に支持され以後流行となった。
日想観は、西方極楽浄土におられるという阿弥陀如来(仏陀より以前からいるとされる過去仏、最高神の1つである)を思いつつ、明石海峡に落ちる夕日を眺める信仰。行ずることで極楽浄土へ行けるという。
ここは、400年前に寺町ができる以前から、信仰の地であった。

様々な和建築、門構え、緑があり、都会離れした景観が続く。非日常的な景観は、一種のテーマパークのようだ。これは明治・大正期でもそうだったらしく、この界隈は昔からの行楽地でもあった。

寺町:大坂城は山地にない平城でありながら、上町台地という天然の要害のを利用していた。東に猫間川、北に淀川、西側湿地帯に西惣構堀(にしそうがまえぼり。後の東横堀川)を引き、南に南惣構掘(みなみそうがまえぼり。俗称「空堀」)を穿った。
しかし他の方位に比べ南が弱いと思われ、寺を集めたというのが寺町起源の定説である。
だが「下寺町」は元和5年、1619年ごろにできる。夏の陣の3年後。徳川の世である。
焼き場を伴う寺は、町中では嫌われるので郊外に集めたという。だから焼き場を伴わない一向宗(浄土真宗)の寺は移動させられなかったという。家康が好んだ浄土宗寺院は移動させられたがそれぞれ広大な敷地を与えられた。このため下寺町のお寺はお堂も大きく、別名「大名寺町」と言う。

大阪の寺町は、下寺町のほかに、中寺町(なかでらまち)、城南寺町など寺町はいくつかあるが、背後が崖で緑に溢れ、口縄坂など7つの風情ある坂(七坂)もあり、ここの風景はまた格別である。映画にも使えそう。

藤原家隆:新古今和歌集選者。思えば、大和王権成立以来の権力者藤原氏も、天皇とともに、鎌倉幕府成立(1192年)で大きく権力を削がれることになる。
伝統的・慣習的に馴染んだ権威でなく、武力が強いものが権力を振るう状況は、現代で言うところの軍事政権であり、「世も末」と思う人も多かったのだろう。

なお、「日想観」自体は1185年壇ノ浦の年に後白河法皇と法然上人が一心寺で西の夕日を拝んだことで有名になった。

阿弥陀如来:大乗仏教では最高神が複数居る。最高階級は仏、如来と呼ばれるが、日本では仏陀(釈尊)ではなく、阿弥陀如来(=阿弥陀仏)の信仰が一番多いようだ。
阿弥陀如来は「無量寿」(限りない命)と「無量光」(限りない光)を与えてくれる。光は希望に通じるのであろう。西方浄土の阿弥陀如来が、夕日と重なるのはわかりやすい。

現在、下寺町を構成する多くの寺が浄土宗で、これもまた阿弥陀如来信仰である。「縁」なのだろうか。

夕日を眺める:大阪は現在でも夕日の美しい町である。淡路島の山々と須磨明石の山々の間の海(明石海峡)に夕日が落ちる季節には、大阪港駅の天保山ハーバービレッジの海遊館前では、大きな望遠レンズをつけたカメラがいっせいに並ぶ。

所在地:大阪市天王寺区下寺町(←地図にリンクしています)
ミナミの中心難波駅から歩いて10分余り。道頓堀演劇街の国立文楽劇場から徒歩4分。

下図「大阪の骨格」でいうと(千日前通)と(松屋町筋)交差点から(松屋町筋)沿いに南に向かう一帯、西側である。クリックすると大きくなります。

お寺は本来、誰でも受け入れる存在であるので、日中であれば門を開けて来訪自由になっている寺も多い。
ぜひお寺のハシゴをして下さい。色んな愉しみ方ができるまちです。
 


下寺町を巡る旅。2009年4月〜始まる!OSAKA旅めがね
 

関連サイト

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